2012年3月29日木曜日

【天文】かにパルサーから吹き出す光速度の99.999999999%に達する風 検出不可能とされてきた超高速のパルサー風をとらえる−JAXA宇宙研

科学ニュース+板 (25/115)

1:依頼28−155@pureφ ★ 2012/03/26(月) 13:39:34.86 ID:??? << 67

図1:かにパルサーとその周辺に広がるかに星雲。©国立天文台

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所インターナショナルトップヤングフェローのDmitry Khangulyan(ドミトリー・カングリヤン)研究員らは、「かにパルサー※」周辺で観測された、周期的に変化する超高エネルギーガンマ線放射を解析した結果、それが、これまで検出不可能と考えられていたパルサー風(電子・陽電子の流れ)に由来する放射であることを突き止めました。これは、パルサー風の存在を初めて直接的に示したものです。また、パルサー風がパルサーにきわめて近い領域で光速度の99.999999999%もの速度に到達していることも分かりました。これらは従来の理論モデルでは説明の難しい重要な解析結果であり、これに関する論文が2012年2月23日付の英科学誌『ネイチャー』に掲載されました。

※ パルサーとは、数秒以下の周期で規則的に電波を発する天体で、その正体は超新星爆発で生じる超高密度天体の中性子星です。かに星雲は超新星残骸であり、そこで見つかったのが「かにパルサー」です。

(解説)かにパルサーは、1054年に観察された歴史的な超新星爆発で生じた天体です。パルスを出す中性子星は強力な磁場をもち、高速で回転しています。また、その周囲には星雲が発達しています(図1)。

一般的には、中性子星からは光速近くまで加速された電子と陽電子の風(パルサー風)が吹き出していると考えられています。この風は、中性子星からわずか1000kmのところにある磁気圏から吹き出し、0.3光年ほど進んだところで星間物質とぶつかって止まります。このパルサー風の上流から下流にかけての進化は、以下の3つの連続的な過程で特徴づけられます。それは、(1)強い磁力線を持つ中性子星が高速回転することによる、中性子星の回転エネルギーから電磁場のエネルギーへの変換、(2)電磁場のエネルギーから、電子と陽電子の流れの運動のエネルギーへの変換(風の加速)、(3)衝撃波による風のせき止め、です。衝撃波では電子が最高で1PeV(1千兆電子ボルト=電子を1千兆ボルトで加速したときの速度)まで加速され、進行方向がばらばらになります。これにより広い範囲で超高速の電子・陽電子と磁力線の相互作用により放射が生じ、星雲として観測されるわけです。観測結果を説明するには、この3つのエネルギー変換はかなり高い効率(100%近く)で行われなければなりません。研究者は40年以上の間、パルサー風の存在は疑いのようのないものと信じてきましたが、意外なことにこのパルサー風についての証拠は、パルサーや周囲の非熱的な星雲の解析から得られる間接的なものに留まっており、パルサーと星雲をつなぐ風そのものを直接とらえたものではありませんでした。

この複雑なシステムを担う2つの要素であるかにパルサーとかに星雲は、それぞれ高エネルギー帯(MeVからGeV)、超高エネルギー帯(TeV)で明るく輝くガンマ線源です。一方で、3つ目の要素であるパルサー風は、パルサーから星雲にエネルギーを運びますが、一般に"見えない物質"であると信じられてきました。パルサー風は光に近い速さに達しているのにもかかわらず、風に伴う磁場とともに整然と流れているために、電子は乱れた運動をしておらず、シンクロトロン放射を出さないからです。しかし、パルサー風は「逆コンプトン散乱」という過程を通じて超高エネルギーガンマ線を放射することはできます。これは、きわめて光速に近い速度の電子と陽電子によって、パルサーの磁気圏や中性子星の表面からの光が弾き飛ばされてエネルギーを獲得することにより生じるものです(図2)。


図2:逆コンプトン散乱によって高エネルギーガンマ線が発生するしくみ。光速に近い速度で運動する電子のエネルギーの一部が光子との弾性衝突後に光子に与えられ、高エネルギーガンマ線が生じる。

宇宙航空研究開発機構 平成24年2月23日
http://www.jaxa.jp/press/2012/02/20120223_crabpulsar_j.html

かにパルサーからの冷たい超相対論的な風を誘起する急激な粒子加速Abrupt acceleration of a cold ultrarelativistic wind from the Crab pulsarAharonian, F.A., Bogovalov, S.V. and Khangulyan, D. Nature (2012) doi:10.1038/nature10793
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature10793.html

つづく
2:pureφ ★ 2012/03/26(月) 13:39:50.07 ID:???
今週のNatureに掲載される論文で、JAXA宇宙科学研究所インターナショナルトップヤングフェロー (注1)のDmitry Khangulyan研究員らは、最近、VERITASやMAGICなどの大気チェレンコフ望遠鏡(注2)で検出された、明滅する超高エネルギー(VHE)ガンマ線放射という驚くべき現象の起源についての解析結果を発表しました。それは、この明滅するVHEガンマ線放射は、パルサー本体からの明滅するX線放射が、パルサー風のきわめて光速に近い速度の電子によって散乱されて生じたと考えると、最もよく説明できるというものです(図3)。


図3:パルサー周辺の磁気圏と光円柱の模式図。

検出されたVHEガンマ線の時間変化は、パルサーの時間変化と周期が同じであるため、一見、磁気圏から放射されているように見えます。しかし、パルサー放射の一般的な理論モデルでは、10GeV以上の放射はほとんど出ません。つまり、超高エネルギーでの検出を磁気圏放射で説明するには、従来のモデルを大幅に変更する必要に迫られます。したがって、明滅するVHE放射はパルサー風から放射されたと考えるのがより自然です。この説明では、観測された放射のスペクトルと時間変化の両方を、たった3つの仮定をおくことで説明できます。その仮定は、風が加速された場所と、その最終的な速度、非等方性の度合いに関係しています。

この解釈によると、先に報告されていた明滅するVHEガンマ線放射が、パルサーから光速に近い速度で整然と流れだす電子と陽電子からなるパルサー風についての初めての観測的証拠だということを意味します。これまでに報告されているガンマ線データを用いて風が加速されている場所を特定し、電磁場のエネルギーから風の運動エネルギーへの変換の早さを見積もったところ、光速度の99.999999999%に達する風の加速が、パルサーの回転軸にそった光円柱(図3参照)の20-50倍という狭い領域で、いわば瞬間的に行われていることが分かりました。パルサー風がほぼ光速で吹き出すことや、その速度の値は、これまでの一般的なパルサー風の学説を支持するものですが、光円柱近くの狭い領域での瞬間的とも言える加速は、これまでの理論モデルで説明するのは難しく、モデルに修正を迫るものです。

注1)「JAXAインターナショナルトップヤングフェローシップ」は日本を宇宙科学におけるトップサイエンスセンターとするための施策のひとつとして2009年から整備された制度で、世界各国で活躍する極めて 優秀な若手研究者を任期付きで招聘するものです。現在Khangulyan研究員をはじめ5名の若手研究者が招聘されています。

注2)VERITAS (Very Energetic Radiation Imaging Array System)、およびMAGIC(Major Atmospheric Gamma-ray Imaging Cherenkov telescope)は共に、宇宙からくるガンマ線が地球大気に突入した際に生じるチェレンコフ放射を検出することでガンマ線をとらえる望遠鏡です。


図4:パルサー磁気圏とパルサー風によって生じるガンマ線のスペクトル・エネルギー分布。今回の解析によって、パルサー磁気圏からの放射だけでは超高エネルギー領域での放射の強度を説明できず、パルサー風からの放射の寄与を含める必要があることが示された。(本文終わり)

JAXA、検出不可能とされてきた「パルサー風」の直接的な証拠を確認
デイビー日高/マイナビニュース 2012/02/23
http://news.mynavi.jp/news/2012/02/23/114/index.html

関連ニュース
【宇宙】かに星雲のパルサーから超高エネルギー100GeV(ギガ電子ボルト)のガンマ線を検出 画像あり
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1318395566/-100
【天文】パルサーに4光年もの長さを持つ「尾」 画像あり
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1310836563/-100
4:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 13:49:22.08 ID:EuZZEaxh << 56 116
カニ光線である
56:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 21:59:13.55 ID:vtIF7SM5
>>4
評価する
6:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 13:56:51.53 ID:K0BhSdCV
星矢NDでもLCでもGでも蟹は黄金屈指の実力者

それとはともかく光速超えてないなら超光速じゃないじゃん
7:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 13:58:15.38 ID:D266Q171
知らなかったが『「大気」チェレンコフ「望遠鏡」』とか㌧でもねえもんがあるんだな、勉強

VERITAS

MAGIC
9:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 14:03:57.92 ID:E5lrj3Ik << 25
かにパルサーって響きが新鮮だな
25:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 16:26:40.65 ID:Ir8By+2O
>>9
カニシュウマイが一般的だしな
10:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 14:05:01.89 ID:c+10gT5+ << 14
100%にしちゃダメなんですね。
14:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 14:33:06.42 ID:BuW56+QF << 15
>>10
達しないんじゃ無いかな〜
15:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 14:44:46.10 ID:e7qbMoTb
>>14
そうたい
13:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 14:29:09.76 ID:aSTm8xm1
えーと、99.999999999%だと質量は…30万倍か。
電子ひとつが金の原子核くらいになる…。
まさに金かに。
19:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 15:20:49.14 ID:gtdxqtMT
JAXAにインターナショナル・フェローとかいたんだ
27:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 16:32:14.59 ID:JlDxO8mX << 61
何でも通り抜けるニュートリノが、何にでも反射されたりねじ曲がったりする光より
遅いはずない。ニュートリノも他の素粒子のこともまだほとんどの知らなかった
アインシュタインの理論が乗り越えられることは当然じゃないの?ニュートンと同じ運命。
61:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 22:54:24.19 ID:u/MnO2t5
>>27
アインシュタインの理論は仮定に基づく理論だから
乗り越えるとかじゃないよ。
「光の速度=最高速度」という仮定が覆されたとしても
とりあえず、アインシュタインの理論で現状が説明できるという現実を無視した理論は展開できない。
35:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 17:14:18.15 ID:2gEnvh1Z << 37
ふーん。で、これで誰の命が助かるの?
37:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 17:22:23.81 ID:Aygp3TUg
>>35
お前に消費されるエネルギーよりは確実に役立ってるよ
41:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 18:20:55.34 ID:N61tExC0 << 44
光と競争して、
1秒後に30万kmほど進んだところで3mmほど遅れるくらい、か。
速いんだろうが、実感沸かないわ。

44:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 18:40:44.64 ID:Ir8By+2O
>>41
宇宙の広さでその3ミリの差は途方も無い差なんだよ。
67:名無しのひみつ 2012/03/26(月) 23:37:48.78 ID:nRN/XtOZ << 112
>>1
この研究員すげーな
どういう頭があればこういう事を考えつくんだ
112:名無しのひみつ 2012/03/28(水) 00:30:28.28 ID:J9Zmdi9K
>>67
蟹について考えに考えを重ねると必然的にたどり着けるはずだ
80:名無しのひみつ 2012/03/27(火) 01:54:57.71 ID:nZV++9UT << 81 83
この現象にインスパイアされて小林多喜二が書き上げた作品が蟹光線
81:名無しのひみつ 2012/03/27(火) 05:02:17.69 ID:qrra4ht4
>>80
審議
83:名無しのひみつ 2012/03/27(火) 06:59:22.12 ID:AJYBlO4C
>>80
うむっ!


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